起業・経営お役立ち記事
憧れの“自分のお店”で自己実現!『出店場所で後悔しないための選定方法』
起業される方の中には、自分のお店を持ってみたい!という方も多いのではないでしょうか?今回は、飲食店の立地選定についてお伝えしようと思います。
これから飲食業で起業する方は、参考にしてみてください。
さて、飲食店の開業準備で重要なことはなんでしょうか?
繁盛する店舗の3大要素として、①商品力、②サービス力、③集客力があります。
そして、③集客力は店舗の出店場所によって差が出てきます。
また、一度出店すると、保証金や内装費用など多額の初期費用が発生しますので、簡単に移転できないことから、準備段階で入念な開店場所の選定が重要となります。
そのため、これから立地を選定される方は下記のプロセスで検討してみてください。
【立地選定のプロセス】
①メインターゲットの明確化
こんな人に食べてもらいたいという理想的なお客様、または、お店の商品・サービスに最も魅力を感じてくれるお客様がどんな属性の人達なのかを明確にしてください。
属性とは年齢、性別、家族構成、住所、趣味嗜好、ライフスタイル、普段の移動手段などを指します。
(例)一人暮らしの20代男性、郊外の駅から10分程度のアパートに住んでいて、食事は外食で済ませることが多く、行くお店は固定化していて、あまり冒険はしない
②利用シーン
ターゲットがどのようなシーンでみなさんの店舗を利用するのか想定してください。
「通勤前後に立ち寄る」、「休日に駅前で買い物をするついで利用する」、「晩御飯用にテイクアウトするため」などできるだけ具体的なシーンを描いてください。
③来店方法
ターゲットが利用シーンにおいて、来店しやすい交通手段が何か想定してください。
「平日昼は職場から歩いて来店」、「平日夜は会社帰りに駅から歩いて来店」、「休日は自宅から自転車で来店」など
④最適な立地の選定
ターゲット、利用シーン、来店方法などを踏まえて、最適な立地を選定します。
上記の例の場合、近隣に商業施設やオフィスがあり、駅から5分程度、賃料が比較的安く、帰路から大きくそれず、テイクアウトもしやすい1階店舗が候補地として挙げられます。
■事前のチェックポイント
〇同じ商圏に存在する競合店の客層、メニュー、価格を調査して、差別化できており、競争に勝てるかどうか
(例)カレー店で出店する場合
同じ業種であるカレー店以外に、ラーメン店や牛丼店は、提供スピードが早く、ボリュームがあり、低価格という類似点があり、同じように若い男性をターゲットとする競合店といえるため、これらも含めて調査しましょう。
〇店舗の周辺は飲食エリアになっているか
直接の競合店が多すぎる場所は避けた方が良いですが、逆に飲食店が全くないエリアも問題になることがあります。
多くのお客様は飲食店を探す際に、飲食店が集中しているエリアへ向かう傾向があり、その後、どの店舗に入るかを選びます。
そのため、飲食店がまったくないエリアでは、選択肢からはずれる可能性があるため、お客様にとって魅力的な飲食エリアであるかチェックしてください。
〇営業時間帯に候補地に行って、「ターゲット層の有無」、「人の流れ」、「視認性(通行時の目の付きやすさ)」、「候補地周辺の集客ポイント(商業施設等)の有無」を確認
平日、土曜、日曜にわけて、営業する時間帯毎に候補地で上記を観察、集計してみましょう。
〇匂い、煙、騒音などが原因でご近所とトラブルならないか
候補地周辺を見て回り、近隣が民家の場合は上記が迷惑とならないか確認しておきましょう。許認可など法的に合法であっても、近隣からクレームが続くと、事業を継続することが困難になることもあります。
〇前に入居していた飲食店の評判、顧客層、集客具合を確認
不動産屋のセールストークだけでなく、近隣の方にもヒアリングして情報収集してみましょう。
■初期費用を見積もってみましょう
場所を探すと同時に、開店に必要な備品のリストアップと見積もりが必要となります。
飲食店の場合は、大きく下記のような項目が挙げられます。
〇家賃
〇保証金(家賃10か月分程度)
〇内装・外装工事費
〇厨房設備
〇什器
〇備品
少しでも初期費用を抑えたい場合は、居抜き物件を探すという方法もあります。
居抜き物件は過去に入居していた店舗の設備などが残っているため、初期費用を抑えることができます。
そのため、居抜き物件を狙って探す方もいらっしゃいますが、留意すべき点として下記の点があげられます。
・前の店舗がなぜ撤退したのか?
・設備等は入居者が求める機能性や法的要件を満たし 、問題なく使用できるか?
・既存の内装やレイアウトに大きく手を加えることなく、店主のこだわりを表現できるか?
・SNS等で人を惹きつけたり、視認性を高める外観に改装することはできるか?
初期費用を抑えることができても、場所や条件が悪ければ今後ずっと集客に苦労することになります。
不動産屋でいい物件が見つかったからといって飛びつかず、冷静にその場所が最適か判断する必要があります。
「前の店も繁盛していた」、「今すぐ契約しないとすぐにうまってしまう」など契約を促されることもありますが、安易に契約すると後で簡単に変更できませんのでお気をつけください。
【市場規模】
出店しようとする場所にターゲット層がどの程度存在するか確認する方法として、行政のホームページがあります。年齢層別の人口・事業所の数、従業員数などが統計データとして公開されています。
まずは、自分のお店に来店される方の動線を想定してみましょう。例えば、地域密着型で、徒歩又は自転車で20分以内を商圏と捉えるのか、大型商業施設等が店舗の近くにあり、それらを利用する方も対象であれば、半径5キロ以内を商圏と考えることもできます。
商圏が広くなれば、自分の目や足ですべての範囲を調査するのは大変であるため、事前調査として、行政が公開している統計データを参考にするのもいいでしょう。
例えば大阪市の統計データは下記のページから確認できます。
大阪市の統計情報
上記の統計データや交通の利便性などを基に出店地域を決め、不動産屋を回り、複数の候補地をリストアップして比較してください。
【計画の立案】
場所が決まれば、すぐに契約するのではなく、次に「店舗の座席数」、「周辺の店舗の集客具合」、「ターゲット層の人口や交通量」などから下図のように曜日別・時間帯別の売上計画を立ててみることが重要です。
上記売上を月単位に合計し、食材費、人件費、家賃、その他経費を引くことで1か月当たりの利益を算出できます。もし、店舗が学校等の近くで、長期休暇期間は売り上げが激減するとか、冷たいものがメインで、冬場の売り上げが下がるような場合には、年間を通しての売上計画を立てて判断しましょう。
計画の結果、収益性が確保できない、集客人数に現実味がない、想定する回転率でカバーできない場合は、ビジネスモデルを見直す、テイクアウトやデリバリーを行う、座席数を増やすレイアウトの変更などを検討しなければなりません。
上記の数値計画から利益を算出し、納得のいく出店計画が決まれば、その後、初期の必要資金と売り上げが軌道に乗るまでの運転資金、そして生活費をあわせ、不足する場合には資金調達を検討する流れになります。
出店後、後悔しないためにも、事前に入念な計画を立てることをお勧めします。
計画作成にあたり悩んだ際は、ぜひ最寄りの公的機関にある経営相談室などに相談してみてください。
- 公開日
- 2021年7月12日(月)
- 執筆者
谷口 睦氏
中小企業診断士/BMIA認定コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー
大阪産業創造館 経営相談室 スタッフコンサルタント【支援内容】
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