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まず最初にやるべきことはコレ!『立ち上げ期こそ考えたい“経営におけるデザイン”』

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2018年5月に経済産業省が「デザイン経営」宣言を発表したように、経営におけるデザインというものが注目され始めています。
デザイン経営について多くの書籍が販売されていますが、いずれもイノベーションだ、ブランディングだと、なんともふんわりしていて、具体的にどういった効果があるのか、どのように取り組めばよいのか、わからないといったところではないでしょうか。今現在、「デザイン経営」という言葉に明確な定義がなく、それぞれの企業が定義する「デザイン経営」に基づいているからなのかもしれません。
本記事ではデザイン経営ではなく、企業の経営においてデザインがどういった役割を負っているのかという点について説明させていただきます。

※「デザイン」という単語は様々な意味を持ちますが、本記事においては一般的にイメージされる「意匠」という意味で使用しています。

 

あらゆる事業者はデザインを使用している

 

経営において「デザイン」というと、消費者向けの製品の見栄えを良くするためのもので、消費者向けのサービス業や事業者向けの事業には無関係だと考えていないでしょうか?

名刺、会社案内、Webサイト、店舗、製品…など、業種や業態、規模を問わず、事業をやっていたら、これらの内のいずれかを使用しているはずです。

そして、これらには全てデザインが施されています。

つまり、規模の大小、業種業態を問わず、あらゆる事業者はデザインを使用しています。

せっかく、デザインを使用しているのであれば、デザインを適切かつ効果的に活用したいですよね。そのためには、経営においてデザインがどういった役割を担っているのかを知る必要があります。

 

デザインが持つ役割を知る

 

突然ですが、ここで質問です。

自分が提供している商品・サービスを適切な相手に対して、適切な価格で販売するにはどうしたら良いでしょうか?

答えは、

「想定しているターゲットに対して、価値をきちんと伝えること」

です。

買い手に対して価値がちゃんと伝えることができなければ、買い手に購入を検討してもらえません。同様に、買い手に価値が適切に伝わらないと価格に対して妥当性も感じてもらえません。

つまりデザインは、商品やサービスの価値を買い手に伝えるにあたって、大きな役割を担っていると言えます。

例えば、中華料理店を見たら、その外装から中華料理店と分かるはずです。
そして、同じ中華料理店でも価格帯によって外装や内装が異なります。
サラリーマンの昼食や仕事の後の飲み会に利用して欲しいのに、高級感がある店舗のデザインであったらどうでしょうか。「高そうなのでやめておこう」と、本来のターゲットに誤ったイメージを訴求してしまい、気軽に来店してもらえないことが予想されます。

 

店舗を持たない事業者こそデザインが重要

 

店舗を持たない事業者にとっては、Webサイトが店舗に相当すると言えるのではないでしょうか。Webサイト以外にも、名刺や会社案内、パンフレットといったものなど、営業・販売に際して様々なツールが使用されます。そして、それらのデザインが、想定しているターゲットに対して自社の価値、事業の価値をきちんと伝えるデザインとなっている必要があります。

例えば、老舗の食品問屋と最先端のAI技術を提供するIT企業では、それぞれ必要なデザインは当然異なるはずです。もし、両社のWebサイトのロゴを入れ替えたとしても特に違和がないというのであれば、それは自社の価値を伝えるためのデザインではないということになります。

製品とは異なり、サービスには形がないため、何らかの手段で価値を伝える必要があります。

そのため、事業者向けのサービス業のように、店舗がなく、形のないサービスを提供している事業者こそ、買い手に価値を伝えるためのデザインの重要性が高くなります。

 

効果的なデザインを作るためには

 

デザインを効果的に活用するにあたっては、デザイナーの役割が大きいことは言うまでもありません。

しかし、デザイナーに依頼する以前に、

・事業のターゲット(対象となる顧客)
・提供する価値
・競合と差別化

を明確化する必要があります。つまり、それらは経営方針や戦略をしっかり構築することから始まり、それがスタッフの行動指針となり、商品・サービス開発の根幹となり、それらをターゲットに伝える役割を担うのがデザインということになります。

そのため、ターゲットや提供する価値があいまいだと訴求内容もあいまいになり、競合と差別化できていなければ競合との訴求内容に違いを提供することができません。

そういった状態でも、デザイナーにデザインの制作依頼をすれば、プロですからそれらしいものを作ってもらうことはできます。しかし、デザイナーはデザイン制作の専門家であって、貴方の事業や競合について詳しく知っているわけではありません。

そのため、戦略やポジションが明確であり、それをデザイナーにきちんと伝えることができなければ、効果的なデザインを制作することができません。言い換えると、競合と明確に差別化されていないのに、デザインだけで競争を回避したり、競争に勝ち抜いたりということを期待するのは現実的ではありません。

 

デザインの判断基準

 

提示されたデザインについて判断をするのは、依頼した貴方です。

何をもって良し悪しの判断をするのかは難しい…というよりは、一概にここを見ればOKというようなポイントは存在しません。

では、提示されたデザインが良いと決めるための判断は、どのようにしたら良いのでしょうか。

まず、デザインを提示されたら、デザイナーに説明を求めてください。それが、自社のターゲット、提供している価値、競合との違いがちゃんと表せているのか、デザインの意図を説明できるかどうか。もし、説明ができないのであれば、そのデザインでは不十分であると言えるでしょう。

気をつけたいのは、デザインを自分の好みに合うかどうかで判断することは避けてください。ご自身の好みに合っていることと、ターゲットへの訴求力があるかどうかとは関係がないという点を忘れないでください。

 

最後に

 

事業活動とは、買い手に価値を提供し、その対価を受け取ることだと言い換えることができるでしょう。価値を創造し、伝達し、そして提供する一連の活動の中で、デザインは価値の創造と伝達において大きな役割を負っています。
つまり、デザインとは表面的なものではなく、事業活動の中でも大きなウエイトを占めていると言えます。
デザインについて今まであまり意識していなかったのであれば、今後は考える機会を作ってみてはいかがでしょうか。

 

 

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公開日
2021年6月4日
執筆者

待谷 忠孝(まちたに あつよし)

DaS株式会社 代表取締役。中小企業診断士。経営学修士。

1975年大阪府生まれ。Webデザイナーとして大小様々な企業のWeb制作・企画に携わった後、経営コンサルタントとして独立。

経営者様の毎日の努力が少しでも報われるように、企業の価値を創る、価値を伝えるための経営におけるデザインの全体最適化の支援をしている。

著書「中小企業が成長するためのデザイン戦略」(三恵社)