大阪の起業家
「防ぎ得た死」ゼロへ。救急外傷全身CTから異常個所を10秒で特定する全身検索型画像診断AI ERAT6S
株式会社fcuro 代表取締役CEO/救急医 外科医
岡田 直己 氏
救急現場において、Preventable Death(防ぎ得た死)と呼ばれる、適切な処置を施せば救命できたと推定される死を減らすことは大きな課題となっています。救命室における初期診断の要となるのがCT画像診断ですが、時間と救急医の人数に限りがある中で、常に正確な診断を下すことは非常に難しいです。我々は、全身検索型画像診断AI ERATS (ER automated triagesystem)により、救急におけるCT画像診断の時間と見逃しの課題を解決することで、救命率を向上します。このシステムは、撮影された全身のCT画像から、見落としなく10秒で疾患箇所を特定し、アラートを出します。これにより、フォーカスを合わせるべき部分が明らかになるため、どのような専門領域の医師でも、従来よりも迅速かつ正確な診断が可能になります。また、これまでCT画像診断に割く必要のあった人員を治療にあてることが可能となるため、少人数の医師でも十分な治療を早期に施すことができるようになる効果もあります。
我々はPreventable Deathのない世界をめざして、救急システム全体を支援する現場起点技術を今後も開発してまいります。
- 起業家紹介
岡田 直己(おかだ なおき) 株式会社fcuro 代表取締役CEO/救急医 外科医
慶應義塾大学医学部卒業後、大阪急性期・総合医療センター、高度救命救急センターで救急医として勤務し現在外科出向中。
日本救急医学会AI研究活性化特別委員会委員。
2019年未踏AIfrontier事業で国家認定のAI開発者となったことを契機に、救命現場に研究開発技術を実装するためfcuroを設立。
以降NEDO事業、IPA未踏アドバンスト事業、AMED医工連携イノベーション推進事業の研究責任者を歴任。
一歩一歩着実に社会実装を実現しながら、現在も救命現場に立ちつづけている。
- 起業のきっかけ
私自身、救急医として、病院に搬送されてきたときにはまだ息をしているにも関わらず、初期診断の遅れや、疾患の見落としによって命を落としてしまう患者を経験してきました。
救急医が現場で必要としているあらゆる技術を実装することで救急医の救命を助け、Preventable Deathのない世の中をめざすと決めたことが、起業のきっかけです。
- 起業までの道のり
最初は私個人でAIを用いた損傷臓器評価装置の研究から開始しました。
この成果は第1期未踏AIフロンティアプログラムで認められ、パスファインダー(救命)に認定されましたが、精度や救急現場用のアプリケーションの実装ができていないことなど多くの課題が残りました。
現場で使える技術を必ず作るという信念のもと、CTO井上と2人で株式会社fcuroを創業し、救急現場に最速で技術を届けるための組織を構築するに至りました。
- 今後の思い
我々は、機械は医療を思考できるかという問いに挑戦しております。
世の中でAIと呼ばれる医療システムも、我々が自ら開発した全身検索型画像診断AIも、未だ計算する機械に過ぎません。医療従事者の行っている、あらゆる検査データと五感を入力とした診療思考とは大きな隔たりがあります。
我々は目下、経時的病態予測AI、対話型医療知識獲得言語AI等の新型AIを開発しております。
これらの知見を統合し、医療を思考するマルチモーダルAIシステムを作り上げ、人とAIによるhybrid救命の実現をめざします。
- 支援機関名