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大阪の起業家

AI執筆の疑惑を行動生体の証跡から人間執筆の証明をするSaaS『Puddin』

2025/11/17

Valar Intelligence株式会社 代表取締役

巣鷹 乃和 氏

生成AIの急速な普及により、レポートや原稿が「誰の手によるものか」を見抜くことが困難になっています。有名作家やインフルエンサーを語った「AIなりすまし」によるSNS投稿や、出版社ですら真偽を精査せずにAI情報をそのまま記事に活用して報道してしまう事案が発生しています。一方で、無実の著者が疑われることで、説明・紛争対応が必要になることも。既にAI検知ツールはあるものの、AIの進化に対して常に一歩遅れがちの状態です。そこで私たちは、検出ではなく、執筆した瞬間から“人間が自ら執筆した証拠”を残すSaaS『Puddin AI(プディンAI)』を開発しました。Puddinの専用エディタでは、キーストローク等の行動生体データと暗号学的タイムスタンプ/ハッシュ連鎖を用いて作品ごとに検証可能な証跡を自動生成します。特にこうした課題に直面している教育機関・出版社・企業研修における公正性と信頼性を回復し、著作者性の紛争コストを低減します。まずは大学・専門学校・出版社・LMS事業者と連携し、「人間執筆のインフラ」を実装してまいります。
HP:https://www.puddin.ai/

起業家紹介

巣鷹 乃和(スタカ ノワ) Valar Intelligence株式会社 代表取締役

米国カリフォルニア州生まれ。約18年前に大阪に拠点を移し、2020年に日本国籍を取得。グローバル人材・スタートアップ支援の分野で営業・事業開発に携わり、海外展開をめざす企業の採用・組織づくりを支援してきた。並行して、シナリオライター・小説家としても活動し、オーディオドラマ脚本や長編小説などの創作に取り組む。人材・教育・クリエイティブの現場で感じてきた「著作者性の曖昧さ」という課題を、テクノロジーで解決するべくPuddinの開発を進めている。

起業のきっかけ

私は長年、作家・脚本家としても活動しており、最近は某テレビ番組で放送予定のアニメ映像作品の英語脚本づくりにも関わりました。何時間もかけて、アニメの世界観や文体に合うように一行ずつ翻訳・推敲していく一方で、「正直、原稿をそのままChatGPTに貼り付ければ、10分で“それらしい英語版”は出てきてしまう」という現実も頭をよぎりました。
しかし、その二つの原稿を見比べても、「自分が時間をかけて書いたのか」「AIに任せたのか」を第三者に証明する術はありません。「人間が書いたことを証明できるサービスはないのか」と世界中を探しても見つからず、それなら自分たちでつくるしかない――この気づきが、Puddin立ち上げの決定的なきっかけになりました。

起業までの道のり

当初は既存のAI検出ツールを徹底的に調査しましたが、誤判定の多さや、善意の学生やクリエイターまで疑ってしまう仕組みに限界を感じました。「見破る」前提ではなく、「最初から証明する」発想に切り替え、キーストロークデータと暗号技術を組み合わせたコンセプトをゼロから設計しました。大学教員や出版社、法律実務家、企業の人事・研修担当の方々にヒアリングを重ねながらプロトタイプを開発しました。そうした試行錯誤の積み重ねが現在のPuddin AIの形につながっています。

今後の思い

私たちがめざしているのは、「人間による執筆の証明」のグローバルスタンダードになることです。レポート、論文、小説、脚本、ビジネス文書――あらゆる文章に、「これはこの人が、この瞬間に書いた」という証明が当たり前に添付される世界をつくりたいと考えています。
大阪からスタートし、まずは大学や教育機関、出版社、企業研修の現場で導入を進めながら、最終的には国や言語を超えて、Puddinの証明フォーマットが「人間の著作者性を担保する共通インフラ」として使われる未来を実現したい。そのために、このビジコンでの学びとご縁を糧にしながら、世界基準のプロダクトに育てていきます。

支援機関名