起業・経営お役立ち記事
起業する前に知っておきたい『売上づくりの基本公式』

起業をしたら、当然ながら売上をあげていかなくてはいけません。そのためには少しでも効率的にプロモーションや販促活動をしていきたいところです。
そうなると、どうしても具体策ばかりに目を奪われがちになりますが、最初に具体的なことを考えると、当てずっぽうになってしまいます。Webサイトを作った方が良いのか、チラシが必要なのかという具体的なことを考える前に、「売上」というもの自体についてしっかりと考えていきましょう。
売上の考え方
売上とは複数の要素で構成されています。いろいろな考え方がありますが、例えば、次のように分解できます。
売上 = 客数 × 客単価
客数を増やしても売上は増えるし、客単価が増えても売上は増えます。このように、構成する要素を分解して、要素ごとに考えていくことが効率的です。
起業時にはまず客数を増やしていくことからスタートしますので、客数をもっと分解して考えていきましょう。
■客数を分解する
売上の構成要素のひとつ「客数」も、さらに分解できます。
客数 = 新規顧客数 + 既存顧客数
ただ、起業初期には既存顧客はいません。
したがって、最初に考えるべきは、どう新規顧客を増やしていくかです。
■新規顧客を分解する
新規顧客も以下のように分解できます。
新規顧客数 = 認知人数 × 行動率
実際に顧客になってくれる人は、あなたのお店・会社・商品・サービスなどを知ってくれている人の中から、実際に買おう・申し込もう・問い合わせようと思ってくれる人だと考えていただくとよろしいかと思います。
行動率…つまり、実際に買おう・申し込もう・問い合わせようと思っていただける確率を上げるためのアプローチを検討します。
■認知人数を分解する
認知人数も以下のように分解できます。
認知人数 = 商圏規模 × 認知率
商圏が大きければ分母が大きくなりますし、認知率が上がれば認知してくれている見込み客も多くなります。
商圏は自分で設定できますが、設定した商圏内の認知率を高めていくためのアプローチを検討します。
以上をまとめると、以下のようになります。
この中で、起業時に売上高に与える影響が大きい要素である、行動率と認知率を高めていくための手段を考えていきましょう。
具体的な手段を検討する
いよいよ、具体的な手段の検討ということになります。商品やサービスの内容、価格、ターゲットによって認知率と行動率を同時に考える場合と、それぞれ別々で考えることが必要なパターンに分けられます。
例えば、高い買い物や長期的に利用する商品・サービスの場合、ある程度慎重に検討するはずです。注文住宅を建てませんかとSNSで発信しても、それだけで実際に家を建てようという人はいないでしょう。分譲住宅の場合はモデルハウス、マンションならモデルルーム、車の場合はディーラーで試乗するなど、購入という行動に踏み切るために必要な情報が提供されています。
逆に、飲食店であればSNSやチラシだけでも認知度向上と行動率へのアプローチができる可能性があります。
ご自身の商品・サービスは、買い手が情報を元にじっくりと検討したうえで購入するものなのか、そうではないのかを判断してください。
認知率を高めるには
認知率は、あなたのお店・会社・商品・サービスなどをどれだけの人が知っているかという割合です。どれだけ良い商品やサービスでも、知られていなければ決して売れることはありません。
知ってもらうというのは起業後に限りませんが、起業後は特に重要です。
・SNS
・Webサイト
・チラシ
・地域密着型のフリーペーパー
・人的営業
など、様々な方法がありますが、ターゲット顧客に何を伝えたいかを考えて、効率の良い手段を選択してください。
行動率を高めるには
認知してもらえた後、そのうちどれくらいの人が実際に「動いて」くれるか。これが行動率です。行動率を高めるには、次のような視点が重要です。
① 商品・サービスの魅力が伝わっているか
商品・サービスの魅力が、買い手に適切に伝わらないと購入や来店、申し込みといった具体的な行動にはつながりません。注意点として、伝えるべきは買い手にとっての魅力であることに注意してください。売り手が「この製品は多機能なところが売りです」と思っていても、買い手が「使わない機能はなくしてほしい」と思っていたら、売り手と買い手の考えている魅力は一致していません。
② 買い手が知りたいことを伝える
以下の特徴をもつ商品・サービスは、買い手が慎重に検討するため、情報の提供が重要になります。
● 高価格…失敗・後悔を避けたい価格帯のものは購入に慎重になります
● 使用期間が長い…長く使うもの、選び直しが難しいものは判断に時間をかけます
● 買い替え頻度が低い…頻繁に買わないので自分で判断しづらいです
● 性能や効果の差が大きい…自分に合うものを選ぶ必要があります
● 失敗の影響が大きい…教育・医療など、選択を誤った際のリスクが大きい場合は慎重になります
逆に、以下のような商品・サービスは検討せずに買っても失敗のリスクが小さいため、情報よりも印象や感覚の影響が強くなります。行動率を高めるために印象を良くすることが有効になります。
● 価格が低い
● 買い替えが簡単
● 使用頻度が低い、あるいは一時的な使用
● 周囲が使っている・定番である
● 直感で判断できる
③ 安心感・信頼感を高める
安心できないものに対価は払えませんし、信頼を得なければやっぱり買っていただけません。特にサービス業の場合は、形がないものを提供していますので、何らかの形で安心感や信頼感を伝えることが重要です。
商品名、パッケージ、店舗のデザインなど、見た目や耳から入る音の印象は重要ですので、慎重に検討してください。最初はコストを抑えたいのでWebサイトを自作するというケースも散見されますが、素人のデザインで、買い手に安心感や信頼感を覚えるか、買い手の立場になって考えてみてください。
売上を構造で考える習慣を
売上を分解して考えるというのは起業時だけではありません。起業後も売上をあげるには「客単価をいかに増やすか」「新規顧客にいかにリピートしてもらって既存顧客となってもらうか」といった、分解した要素ごとに考えてください。
また、日々生活をしている中で、大量のプロモーションを目にしています。せっかくなので、「これは認知目的かな?」「行動率を上げるためにどんな工夫がされているかな?」「自分だったらもっとこうするのに」といったことを、今からでも意識してみてください。今までスルーしていたWebサイトやチラシが、皆さんの事業が成功に近づくための教材になりますよ。
- 公開日
- 2025年4月7日
- 執筆者
待谷忠孝(まちたに あつよし)
DaS株式会社 代表取締役 /中小企業診断士 /経営学修士
1975年大阪府生まれ。Webデザイナーとして大小様々な企業のWeb制作・企画に携わった後、経営コンサルタントとして独立。データ活用による現状の把握、 デザインによる価値創造と伝達、 デジタル技術による業務改善を通じて、経験や勘だけに頼らない経営へのアップデートを支援している。
著書「中小企業が成長するためのデザイン戦略」(三恵社)